コンセプトのわかりやすさがヒットの鍵
辻口:話をしていて感じるんですが、佐藤さんの仕事の仕方は売る人たちが納得し、さらにその気にさせてしまうような説得力があるんじゃないかな。おそらく売り場がきちんと説明できるものを出していると思うんですよ。だからこそ、それがちゃんと売れて行く。ただ単にデザインだけを出して、「ハイどうぞ」だけだったら、ここまでヒットの連続にはならないだろうという気がします。
佐藤:そうですね。おっしゃる通りもちろん形を作るんですけど、物理的な形状だけを作っているんじゃなくて、どちらかといえば、そこに込めたコンセプトを売っている感覚です。だから、何においてもしっかりとしたコンセプトをおくことが一番大切で、プロジェクトに関わる人たちにも徹底してそこを伝えます。その結果、プロジェクト自体のコンセプトがしっかりと一本化されていくんですね。
辻口:そうやって佐藤さんのブランドが確立されているような感じがします。
佐藤:一例で言うと、だいぶ前ですけど、キリンの発泡酒『極生』を商品開発から手がけたんです。発砲酒が安かろう悪かろうというイメージだった頃で、それを払拭するために、あえてパッケージの缶を1色印刷にしたんですよ。発泡酒は偽ビールじゃなく、さっぱりしていて切れ味の良い、カジュアルで現代的な飲み物だっていうコンセプトを作って。キリンとしては10円値下げしたことがマーケティング戦略の核だったから、テレビCMをやめて、広告費を半額くらいにすることも提案しました。その方がビールより安いという理由が消費者に対して明確になりますから。
辻口:そういうコストパフォーマンスも含めて提案しているんですか?
佐藤:はい、もう全部。なんで値下げできるのかというストーリーをちゃんと作らないと、これまでは意味もなく高かったのか、原料を下げて味を落としたんじゃないかとか思われてしまいますから。そうしたら、『極生』が発売された時に酒屋のおじさんが、「これはね、キリンがCMをやめて、缶を1色印刷にして値下げを実現した商品なんですよ。知ってますかお客さん」って。
佐藤:そうですね。おっしゃる通りもちろん形を作るんですけど、物理的な形状だけを作っているんじゃなくて、どちらかといえば、そこに込めたコンセプトを売っている感覚です。だから、何においてもしっかりとしたコンセプトをおくことが一番大切で、プロジェクトに関わる人たちにも徹底してそこを伝えます。その結果、プロジェクト自体のコンセプトがしっかりと一本化されていくんですね。
辻口:そうやって佐藤さんのブランドが確立されているような感じがします。
佐藤:一例で言うと、だいぶ前ですけど、キリンの発泡酒『極生』を商品開発から手がけたんです。発砲酒が安かろう悪かろうというイメージだった頃で、それを払拭するために、あえてパッケージの缶を1色印刷にしたんですよ。発泡酒は偽ビールじゃなく、さっぱりしていて切れ味の良い、カジュアルで現代的な飲み物だっていうコンセプトを作って。キリンとしては10円値下げしたことがマーケティング戦略の核だったから、テレビCMをやめて、広告費を半額くらいにすることも提案しました。その方がビールより安いという理由が消費者に対して明確になりますから。
辻口:そういうコストパフォーマンスも含めて提案しているんですか?
佐藤:はい、もう全部。なんで値下げできるのかというストーリーをちゃんと作らないと、これまでは意味もなく高かったのか、原料を下げて味を落としたんじゃないかとか思われてしまいますから。そうしたら、『極生』が発売された時に酒屋のおじさんが、「これはね、キリンがCMをやめて、缶を1色印刷にして値下げを実現した商品なんですよ。知ってますかお客さん」って。

「いや……、そうですか。じゃ、2箱下さい」って言ったんですけど(笑)。要するに、かなり正確に話が伝わっているからこれはうまくいくだろうと思ったら、やっぱりバーンと売れたんです。だから「コンセプトの文脈」がどれだけ明解にできているか、どれだけ伝わりやすいかが重要になってくるんですよね。
辻口:なるほど。
佐藤:使う言葉もかなり考えます。プロジェクト内でみんながブレないようにしないといけないですからね。
辻口:そういえば、佐藤さんのアトリエに行った時にも、今の言葉通り「表現しようとしていることが実に明解だな」と、感じました。まさに今の話と1本のラインでつながりますね。
佐藤:辻口さんの作品もすごくわかりやすいっていうか、筋が通っていると思います。
辻口:ああ、僕もその時々に自分の中でテーマを決めて表現していますから。それをこういう風に佐藤さんから言ってもらうのが一番嬉しいですね。
日本文化をもって、オンリーワンスタイルを

佐藤:話がスタイルに戻るんですけど、辻口さんはスタイルに関してどう考えているんですか。
辻口:最初はフランスにかぶれていた時期もありました。日本には何年もフランスで修行し、それを掲げて商いをしている人もたくさんいます。だけど僕自身は、フランスへ渡ってみて、やっぱり自分はフランス人にはなれないんだって思い知らされたんですね。それなら日本人として、日本文化をもって、オンリーワンスタイルを確立しようと。日本から世界に発信するというのが自然な流れだと思ったんです。
それが徐々に「和をもって世界を制す」という現在のコンセプトに進化しました。その中で米粉を使ったスイーツというジャンルを確立したり、最近では、「J麺」という米で作った麺のプロジェクトを推し進めています。「日本人としての自分という観点から見たスイーツづくり」が僕のスタイルなんですね。
佐藤:そういった中で次々と新たなコンセプトを打ち出しては自分のフィールドを広げていますよね。
辻口:僕は実家が倒産してしまった時に、ロールケーキを屋台で売ろうと思ったことがあったんです。1軒目に作った自由が丘の店『モンサンクレール』の倉庫として借りた建物を見ているうちに当時のことを思い出して、そこの1階でロールケーキ専門店を始めたんです。そうしたらとても好評で、お店としても大成功でした。それまでは一店舗のケーキ屋を守りきることが美徳だと思っていたんですけど、「待てよ」と。同じ店を増やすのではなく、全く違うコンセプトを考え、形にしていくことによってさらにスキルが上がっていくと気がついたんです。それをきっかけに、あらゆることがどんどん変わってきた気がします。
佐藤:なるほどね。その感じが僕とも話が合うポイントなんでしょうね。僕のやっていることって、デザインやクリエイションという点では全然ブレていないんですけど、フィールドを移るというか、辻口さんで言うと違うコンセプトの店を作る感じに近いと思うんです。そういう方がワクワクするんですよね。
佐藤:そういった中で次々と新たなコンセプトを打ち出しては自分のフィールドを広げていますよね。
辻口:僕は実家が倒産してしまった時に、ロールケーキを屋台で売ろうと思ったことがあったんです。1軒目に作った自由が丘の店『モンサンクレール』の倉庫として借りた建物を見ているうちに当時のことを思い出して、そこの1階でロールケーキ専門店を始めたんです。そうしたらとても好評で、お店としても大成功でした。それまでは一店舗のケーキ屋を守りきることが美徳だと思っていたんですけど、「待てよ」と。同じ店を増やすのではなく、全く違うコンセプトを考え、形にしていくことによってさらにスキルが上がっていくと気がついたんです。それをきっかけに、あらゆることがどんどん変わってきた気がします。
佐藤:なるほどね。その感じが僕とも話が合うポイントなんでしょうね。僕のやっていることって、デザインやクリエイションという点では全然ブレていないんですけど、フィールドを移るというか、辻口さんで言うと違うコンセプトの店を作る感じに近いと思うんです。そういう方がワクワクするんですよね。
「スイーツノート」に辻口博啓×佐藤可士和・佐藤悦子による鼎談記事が掲載
本対談は、SEIBUNDO MOOK「スイーツノート」第3号の「辻口博啓×佐藤可士和・佐藤悦子」鼎談企画と同じ日に取材を実施。佐藤可士和氏に加え、事務所のマネージャーでもある佐藤悦子さんと辻口シェフによる鼎談は、『「華」のあるクリスマスパーティーのつくり方』がテーマ。佐藤家のクリスマスの過ごし方、辻口シェフの今年のクリスマスに向けたケーキのプランなどが語られている。また、「スイーツノート」第3号の特集は、「トップパティシエ14人のクリスマスケーキ」として、本誌にもご登場いただいた鎧塚俊彦氏、辻口博啓氏をはじめトップシェフが登場。スイーツファンにはぜひおすすめしたい1冊だ。
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