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「Tarte Kulger」 元弁護士が作る人気のタルト

近年、マレ地区の北側は人気の場所です。新しいコンセプトの店が次々建って、改めて注目される界隈になっています。例えば、子供服で有名なブランド“ボン・ポワン”を立ち上げたコーエン夫妻が、2000平米の工房スペースを改装して、オープンしたセレクトショップ“MERCI!”という店。収益は恵まれない子供たちへの基金に寄付されるという新しいコンセプトで、この考えに賛同したショップが参加しています。インテリアショップから、ウェア、花屋までが肩を並べているので、まるで巨大マルシェのよう。皆で何かを作り上げるというアイディアが光っています。

ちなみに余談ですが、ここのカフェと軽食スペースもいいので、今度是非取り上げたいと思います。また、パリのお菓子特集のときに紹介した、ジャック・ジュナンのお店も北マレでした。さらに、斬新なウィスキーバーもできるなど、なかなか目が離せないのがこの地区でしょう。

“タルト・クリュゲール”もそんな新ショップの一つ。昨年夏にオープンしてからというもの、口コミで今や人気の店となっています。とても古い建築で、石造りの内壁がコージーな雰囲気。木のダーブル・ドット(大テーブル)と椅子が、温かな、でもそのセンスのお陰で、新しさのあるインテリアになっています。

オーナーは、カトリーヌ・クリュゲールさん。もともとは、弁護士だったというキャリアの持ち主ですが、昔からタルト作りが大好き。人が集まると必ず腕を振るっていたといいます。そんな“好き”が高じて、あるときタルト屋を始めることを思い立ったそう。そして、この物件にたまたま巡りあったといいます。200平米ほどもある広いスペース。奥には、その昔パン屋だったそうで、煙突の空気穴もありました。奥をまるまる作業場にできるというアバンテージ。夢がどんどん膨らんでいったそうです。

好きが高じて始めてしまった、のではありますが、さすが弁護士だっただけあって、ビジネスとして成り立たせるための準備には余念がありませんでした。例えば、レシピはMOF(フランス最高職人賞)の称号をもつパティシエに依頼して、カトリーヌ自身のレシピを試食してもらい、助言をもらっています。そして試作を繰り返して、プロとしてきちんとお客に食べていただけるタルトのレシピを作り上げたのです。

そんな風にして作り上げたタルトの評判は、サレ(塩味のもの)もシュクレ(甘味のもの)も抜群。おおよそ毎日3種ずつ、計6種を出しています。例えば、ある一日のメニュー。コンテチーズとマスタード入りのトマトタルト。グリンピースとミントをツナと一緒にミンチにして、芥子の実入りのタルト生地に焼き込んだツナのタルト。リコッタ、そしてマジョレーヌのハーブをきかせ味にした青菜系のタルト。シュクレタイプは、タルト生地に入れる砂糖を黒砂糖にして、ジンジャーもきかせたチーズケーキ。また、有塩バターキャラメル入りの濃厚なチョコレートタルト。ココナツ風味のクリームに、青リンゴを乗せたタルトなとなど。

ベーシックなタルトに、アクセントに香りをしのばせていて、ほう!という驚きがあるのです。瞬く間に評判を高めて、今年初めにタルトの本も刊行しています。お店はベルギーで集めたアンティークのお皿やグラスで、ほっと一息つくお客さんでいっぱい。テーブルに置かれた本や雑誌をみながら、いくらでも長居をしてしまえるのです。
Tarte Kulger_タルト

(左)チーズケーキとイチゴのタルト。
(右)チョコレートタルト。見た目にも味わいにも、ちょっとした工夫が。


Tarte Kulger_カトリーヌ・クリュゲール

もともと弁護士だったカトリーヌ・クリュゲールさん。7月、オープンしてちょうど1年。アイディアも豊富。





小さな裏通りにあるほっと一息つける空間。石造りの壁と、木のテーブルがナイスマッチ。手前右は、リュバーブのコンフィチュールとクリームの優しい味わい、赤いフルーツの酸味がぴったりのタルト。左はトマトタルト。


店舗詳細

名称:Tarte Kulger
住所:6 Rue du Forez 75003
電話:01.53.01.53.53
営業時間:11:00~20:00(火〜土)、10:00~16:00(日)、月休

伊藤文(いとうあや):料理ジャーナリスト

1993年渡仏。コルドンブルー料理学校パリ校卒業後、
フランスの食文化を掘り下げる取材を重ねる。
著書に『フランスお菓子おみやげ旅行』、訳書に『招客必携』、『ロブション自伝』など多数。


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