San Francisco

アメリカンドリーム 〜トップパティスリーになるまで〜

アメリカという国は何がきっかけで成功に結びつくか分かりません。お金や学歴が無くても、世界一のお金持ちになる人もいます。今回ご紹介するのは獣医になる為にアメリカに留学し、あるきっかけからトップペストリーシェフになった、睦美さんのお話しです。

才能はそれまでひっそり眠っていたのでしょうか。それを目覚めさせたのは、睦美さんが大学で単位の為にとったベーキングクラスがきっかけでした。ベーキングの面白さを知った彼女は、そこで先生に認められ、インターンシップとしてクラスを手伝う事になります。ベーキングの基本をそこで学び、次のステップとしてクラッシック・フレンチベーカリーの「La Farine」で2年半、タルトからペストリー、ウェディングケーキまでみっちり修業をしました。

その頃はまだ英語もままならなかった睦美さんですが、オーナーと直接交渉し、働かせてもらったそうです。そこで自信をつけた彼女は、次にレストランでのシェフを目指し、一流レストランの門をたたきます。そこはサンフランシスコで当時有名な「Rubicon」というフレンチレストランで、ここでも彼女は直接交渉をし、アシスタントとして働くことになります。

ところがしばらくして、ペストリーシェフが辞めてしまいました。そこで睦美さんにチャンスが訪れます。自分の実力をアピールし、初めてペストリーシェフとして名を刻みました。また、ここに通うお客は一流の方たちで、彼女のデザートの評判は口コミで広がり、あるレストランのオーナーからヘッドハンティングされます。そして当時予約が一番難しいとされた高級ベトナムレストラン、「Slanted Door」のペストリーシェフとして迎えられました。

その後9年間、睦美さんは得意とするローカルフルーツをふんだんに使った、アジアとフレンチをミックスした創作デザートを次々と開発し、トップパティスリーとして上りつめます。彼女が何事も怖がらず、チャレンジし続けた結果といえます。

そして2009年12月、ついに睦美さんの長年の夢であった、自分のベーカリーをオープンしました。「Sandbox」とは「砂場」という意味。子どもが遊べる場所を提供し、“ママカフェ”のようにしたかったのだそう。バーナルハイツと呼ばれるこの地区は、サンフランシスコ全域を眺める丘の麓にあり、犬や子どもが多く、暖かい日差しが街を包むように照り付ける、そんな環境です。

ショーケースに並ぶクロワッサン、ブリュオッシュ、アンパン、メロンパン、マカロン、チーズケーキ、サンドイッチ等、日本の要素がたっぷりで、その中でもねぎ味噌パンや柚子パン、日替わりデザートが人気です。その美味しさは、食べた時に感じる小麦粉の質や滑らかさで一流だとわかります。秘訣は丹念な下ごしらえと、オーガニック素材を使用するなど、厳選した食材が上げられます。中に詰める餡も柚子ジャムも全て手作りです。

睦美さんが持つ“自由”でクリエイティブな素質がそのままこの店に繁栄され、焼きたてのパンのいい香りがすると、子どもたちや近所の人が駆けつける、そんな素朴で小さなベーカリーがこの街のハイライトになっています。
オーナーペストリーシェフ、竹原睦美さん

オーナーペストリーシェフ、竹原睦美さん



人気の柚子ママレードセージパン。柚子の香りが濃厚なママレードは、さわやかな甘さ。オーガニックフルーツやハーブでアクセントをつけるのが睦美さん風。



アメリカで大人気のスティッキーパン。フワフワで弾力があるブリュオッシュにブラウンシュガー、ナツメグ、シナモンソースにピーカンが香ばしい。



高級ベトナムレストラン「Slanted Door」のペストリーシェフ時代に作ったデザート。



(左)マイヤーレモンのチーズケーキとチョコレートムース、フレッシュベリー添え: 卵白を硬く泡たてライトに仕上げたチーズケーキ、中はレモンの風味が凝縮されている。
(右)フレンドリーな店の雰囲気。


店舗詳細

名称:Sandbox bakery
住所:833 cortland avenue (at gates). san francisco. california 94110
電話:415.642.8580
営業時間:月~土:6:00~15:00 日7:00~15:00
関根絵里

関根絵里(せきねえり):グルメ、トラベルライター&フォトグラファー/コーディネーター

サンフランシスコ在住。生まれつきのスイーツ大好き人間。
96年からの海外生活で世界のスイーツリポートに挑戦中。
現在はアメリカのフード新聞、マガジン、日本のトラベル、フードマガジンなどに執筆中。
ご意見、ご感想は:elligo@gmail.comまで。


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